アンリ・サラの作品は新しい感知の形式を可能とするために、よく知った視聴覚経験を転覆させる異化効果を持っている。フランクフルトの展覧会のために、サラは彼の作品である三分間のサイレントビデオ“Cymbal”(2004)を、ヴィデオインスタレーションに作り直し“After Three Minutes”(2007)と名付けた。“Cymbal”は、ストロボの光を反射するシンバルをクローズアップで撮影し、オプティカルな音響効果を作り出している。“After Three Minutes”では、保留と提供との間の相互作用を新しいレベルへと導いている。ヴァージョンが少しばかり変更された“Cymbal”は、ひとつのスクリーンに二重に映写され、同じヴィデオが別のスクリーンで表示されたとしても、美術館の監視カメラの映像は異なったアングルと異なったイメージの質を捕らえている。他の作品では、サラは、フィルターとメディアを通じて、視覚的な情報よりもアコースティックなものに移行している。“Air Cushioned Ride”(2006)は、雰囲気の偶然の一致を捕らえたドキュメントである。駐車場をドライビングしている間、サラは彼のカーラジオからふたつの音楽番組を選び、同時に聴いた。たくさんの大型トラックの存在によって、ラジオの電波はブロックされ、偏向される。カメラは残された貨物自動車の周りを何度も旋回し、音楽はバロック管音楽とカントリー&ウェスタンの間を交互する。サラは、サウンドトラックへの録音とバロック三重奏とカントリー&ウェスタンバンドとの共同パフォーマンスによるライブ演奏へと帰着していった。ここでの演奏はヴィデオとして“A Spurious Emission”(2007)に収められた。スコアも同様のタイトルとして存在し、偶然の/同時発生の音楽の形態として始まり、さらなる置き換えを可能としている。
text by Astrid Mania (berlin-based indipendent writer and curator)
“A Spurious Emission” - Hauser & Wirth
http://www.hauserwirth.com/artists/26/anri-sala/images-clips/5/
text by Astrid Mania (berlin-based indipendent writer and curator)
“A Spurious Emission” - Hauser & Wirth
http://www.hauserwirth.com/artists/26/anri-sala/images-clips/5/