禍いが君の身体に入った。どこかのマチカナリが、君に禍いを起こしたのさ。君がうっかりしていて、マチカナリの道を通ったからだよ。君の身体は、魂のクシュマにすぎない。蚕の繭のような魂を包み込むマント。君の魂は、君のなかに侵入したい禍いから身を守ろうとしたんだ。魂は一つであることをやめ、たくさんの魂に分かれて、禍いを混乱させようとした。禍いは、できる限り魂を盗んだ。一つ、二つ、そして、いくつも。だが、たくさんかき集めることはできなかったのだろう。なぜなら、そうだったら君は完全に死んでいたはずだ。トエの水で身体を清め、湯気を吸いこんだことは悪くない処置だ。しかし、もっと抜かりのないやり方を本当はすべきだった。頭のてっぺんにアチオテの汁を赤くなるまですり込むのだよ。そうしておけば、禍いは君の魂を持って出ていけなかった。そこが、出口であり、入り口だから。アチオテはその道を塞いでしまうのだ。中に閉じ込められたと思うと、禍いは力を失い、死んでしまう。身体は家と同じなのさ。家に入ってきた悪魔は、魂を盗んでも、もっとも高い天井のてっぺんから逃げ出せないのではないだろうか。天井の先端の木を組むとき、なぜ細心の注意を払うのか。それは、寝ている者の魂がたとえ悪魔に盗まれても、その悪魔を逃さないためだよ。身体も同じことだ。魂を失くしたために、身体から力が抜けるように感じたのだ。しかし、それはもう君のところへ戻ってきた。だから、君はここにいる。カマガリーニが眼を離したすきに、魂たちは、キエンチバコリのもとから逃げ出してきたのだろう。君を捜して、戻ってきたのだろう。君は魂たちの住家じゃないだろうか。
—バルガス=リョサ『密林の語り部』