われわれは陸を去って、船に乗り込んだ! われわれはみずから退路を断った――というより、むしろ陸そのものを断ったのだ。さらば、小船よ! 心せよ! お前のかたわらに横たわるのは大洋だ。たしかに、大洋はいつも咆哮しているとはかぎらない。絹と金と優しい夢想のごとくに横たわりもする。だがやがて、その無限であること、また無限よりも恐るべき何者もないことを、悟るような時が来るだろう。おお。わが身の自由を感じ、しかもその無限という籠の壁に衝きあたる哀れな鳥よ! 陸への郷愁が、その陸にはより多くの自由があったかのように、お前を襲うならば、痛ましいことだ!――もう「陸」などはどこにも存在しないのに!
—ニーチェ
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