サイトとノンサイトは変数相互の関係の集合を構成する。サイトは、地図、写真、類比物(その土地の元の地勢を暗示する箱やトレー)、岩石標本、そして言葉の標題などの形式を通じて作家の提供する情報によって確認される。ノンサイトは、このレファレンスの積み重ねによって、不在のサイトの表示者としてふるまう。スミッソンの抽象彫刻のモデュールが地図に変化するという事態が起こったのである。地図製作術の格子の座標が、モデュール彫刻の観念的幾何学に取って代わった。これは、別の言い方もできる。スミッソンは、ヴィルヘルム・ヴォーリンガーの抽象と感情移入という二元論的体系を拒否しているからである。「幾何学は、非生命的なものの表現として私の心を打つ。純粋抽象の格子や網の目は、自然を一定の秩序に還元する表現や再現でないとすれば、一体なんであろうか」。
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『サイト/ノンサイト(破壊の線)、バイヨンヌ、ニュージャージー』(1968)は、ニュージャージーの海岸線についてふれたものである。その崩壊してゆく海岸線にきれいな埋め立てが施されつつあった。スミッソンは、このノンサイトのために使用されているコンクリートの破片をいくつか拾い出した。作家の言葉を引けば、そこは正に「芸術の立場から再度明確化されるべき」荒廃した場所であった。ジャージーの低湿地がここにあり、葦が高く生いしげり、その囲い込む空間を曖昧なものにしている。通行料金所が近くにあるが、そこを出ると入り込むの難しい。スミッソンは、建物を「本質的に名のないもの」と見ている。後に訪れた時、スミッソンは、その風景が急激に変化したことを発見する。完全に埋め立てられた海岸線の方まで工場が建てられていた。ニュージャージーで彼が好きな事のひとつは、それが「変化の過程にある風景」であるという事実である。サイトが変化するように、彼のノンサイトは、死んだ都市(あるいは仮説上の大陸)への記憶という性格を次第に帯びるようになる。ノンサイトのレファレンス・システムは、常に自己自身を取り消す可能性を有している。
—ローレンス・アロウェイ「ロバート・スミッソン」
—ローレンス・アロウェイ「ロバート・スミッソン」
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